「アメリカ・シニアベンチャーの成功率70%」から日本人シニア起業成功の可能性を探る

中小企業白書によれば、日本の開廃業率は、開業率が5%前後、廃業率が6%前後で推移しており、廃業が開業を上回っていることが発表されています。また、日本政策金融公庫による2017年発表資料によれば、50歳以上のシニア起業率は、全体の13.5%程度となっています。

2014年に世界銀行が行なった起業環境に関する国際比較によれば、開業に要する手続き、時間、コストを総合的に評価した場合、日本の起業環境は総合順位で120位で、「ASEAN+35」の中では7位、OECD34か国中では31位と極めて低位に位置しています。

しかし、日本人の起業希望者及び起業家の推移を年齢別に見ると、若者の起業希望者及び起業家の割合が減少している一方で、60歳以上の割合は年々高まっていてシニア起業家は年々増えている様なのです。

その要因として、シニア世代は、若い人に比べて自己資金が豊富であり、社会経験を蓄積していること、退職後も何らかの形で働き続けたいと希望する者が多いことが挙げられています。そして、その一つの選択肢として、起業を選ぶシニア層が多くなっているようなのです。

日本人は、起業に対して「失敗への恐怖」を感じる割合は欧米と比べて非常に高いようです。一般的に、日本社会においては、企業に一旦就職すれば解雇のリスクは低く、安定的な収入が得られる大企業や公務員などの安定志向が強く、わざわざリスクのある起業を選択して失敗することを求める人は少ないのでしょう。

もちろん、仕事には失敗がつきものなのですが、起業には更に大きなリスクが伴うので、若い世代が失敗を恐れずガムシャラにチャレンジしていくのとは反対に、シニア世代においては失敗が許されません。

しかし、シニア世代には、これまでの仕事上で学んだ失敗の経験を活かして新しい仕事にチャレンジすることができます。また、シニア世代の方は、若い方に比べて失敗を経験した回数が多く「失敗経験値」が高いので、起業失敗のリスクが低減するのではないかと思われます。

その意味で、日本におけるシニア世代の起業の成功率は何%になっているのかは明確には分かりませんが、かなり高くなっているのではないでしょうか。たぶん、シニア世代は、ある程度の成功するという自信をもって起業していてそれが成功の重要な要因ではないかと考えられます。

ですので、起業において成功するためには、成功への自信を高めておくことが重要であるでしょう。

欧米ではシニア起業家の成功率は70%

「高齢者の起業の成功率は70%」シニア起業家の言葉に秘められた可能性

欧米ではシニア起業家の成功率は70%にも上るらしいそうです。

この講演者は、Paul Trasner(ポール・トラスナー)氏という再生生分解パッケージ製造会社のCEOです。64歳で勤めていた会社を解雇され、自ら会社を66歳で立ち上げて成長企業にしました。そのトラズナー氏が強調するのは、アメリカにおいては、シニア起業の成功率が非常に高いという事実。また、起業成功の秘訣を、40年以上にわたる経験の中で、ネットワーク、評判、技術などの蓄積があったからと語っています。

トラズナー氏はパッケージ業界で長く働いてきましたが、アメリカ社会において大量消費が大量のゴミを出すことに疑問を感じながら仕事をしていて、もっと孫の世代や社会に貢献できる仕事を考えて、40年の実績を基にして「再生生分解パッケージ」という仕事を思いつき、66歳という年齢でのシニア起業に踏み切ったそうです。

ちなみに、米国では2050年に65歳以上の人口が、2倍以上の8,400万人になると想定されています。

内閣府の調査では、日本の高齢者人口は、「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には3,677万人に達すると見込まれています。その後も高齢者人口は増加傾向が続き、2042年に3,935万人でピークを迎え、約2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上になると推計されています。

トラズナー氏は、「日本人の年齢人口の逆ピラミッド化が、実は日本の未来にとって大きなチャンスでありうることを、我々はもっと認識していいのではないでしょうか」「”高齢者”という言葉で人を一括りにすることをやめたとき、日本の社会は思わぬチャンスを手にいれることができるのです」ということを語っています。

日本金融公庫「2016年度新規開業実態調査」のアンケート結果にみるシニア起業の実態

2016年に実施された日本政策金融公庫総合研究所のアンケート調査が「2016年度新規開業実態調査」として以下のようにまとめられています。

○ 実務経験を生かせる分野で開業 現在の事業に関連する仕事を経験した開業者は85.3%(平均経験年数13.9年)、管理職を経験した開業者は68.7%(同10.1年)に上る。また、現在の事業に決めた理由として「これまでの仕事の経験や技能を生かせるから」(47.2%)、「身につけた資格や知識を生かせるから」(21.0%)を挙げる開業者が多い。多くの開業者は、実務経験を生かせる分野で開業している。

○ 開業時は資金繰りや販路開拓に苦労する開業者が多く、開業後は人材に関する課題を抱える開業者が増加。開業時には「資金繰り、資金調達」(46.0%)、「顧客・販路の開拓」(45.7%)に苦労する開業者が多く、これらの課題は開業後も多くの開業者にとって課題となっている。開業後は「従業員の確保」(開業時17.1%→現在26.5%)、「従業員教育、人材育成」(同13.6%→20.7%)など、人材面の課題に苦労する開業者が増えている。

○ 開業時および開業後の経験を通じて企業経営に必要な能力を高め、経営者として自信をつける 企業経営に必要な知識・能力について、経営者として「現在自信がある」と回答した割合は、すべての項目で開業前を上回っている。総合的な経営力に関しても、「開業時に自信があった」(50.5%)より「現在自信がある」(63.7%)のほうが高い。開業者は、開業時および開業後にさまざまな課題に直面するなかで、企業経営に必要な能力を高め、経営者として自信をつけていく。

○ 自分の能力発揮について、やりがいを実感
現在、「やりがい(自分の能力の発揮)」について、「かなり満足」(32.7%)または「満足」(47.2%)している開業者が多い。
多くの開業者が、自分の能力発揮について、やりがいを実感している。
多くの開業者は、実務経験を生かせる分野で開業している。
開業時および開業後にさまざまな課題に直面するなかで、企業経営に必要な能力を高め、経営者として自信をつけていく等、自分の能力発揮についてやりがいを実感している開業者が多い。
===

日本政策金融公庫総合研究所の調査によれば、シニア起業家の開業『経験を活かした起業』が70%以上にもなっているとのことで、シニア世代の起業成功のコツは、「それまでの経験だけにこだわらず、学ぼうとする姿勢がある人が、仕事の業績も順調のようです」であるとしています。

また、2017年の内閣府の調査によれば、「今後も収入の伴う仕事をしたい(続けたい)と思うか」の質問の回答では、今後も仕事をしたい(続けたい)と思っている人の割合は日本は44.9%、アメリカ39.4%、スウェーデン36.6%で4割前後なのに対し、ドイツ22.7%で2割台となっています。

そして、シニア起業家の開業動機では、
経験・知識・資格をいかしたかった(50%)
社会の役に立つ仕事をしたかった(36%)
年齢に関係なく仕事がしたかった(36%)
自由に仕事がしたかった(35%)
収入を増やしたかった(25%)
のような結果が出ています。

60歳以上のシニア世代の起業家の起業分野では、「サービス業」での起業が最も高く、特に、職歴を活かした経営コンサルタントや営業代行等が多くなっているようです。また、業種でみれば、サービス業やコンサルタント業、営業代行業などでの成功率が高くなっているそうです。

日本でのシニア起業の実態とシニア起業の可能性

これらの調査結果からみれば、シニア起業のキーワードとしては以下のようなモノが挙げられます。

  • 自分が楽しいと思える分野での起業
  • やり甲斐、生き甲斐を感じる分野での起業
  • 自分の得意分野での起業
  • 投資は控えめにして利益だけの追求はしない
  • 情熱を持って取り組める分野で起業する
  • 在庫を抱えるビジネスは極力控える
  • 自己資金率を低くし公的な融資を積極活用
  • 人件費やオフィスの家賃などの固定費を低くする
  • サービス業やコンサルタント業、営業代行業などでの起業

起業する中高年者の特徴としては、安定収入型と個人又は少数の従業員を雇いながら、規模は小さくとも安定した収入を得ることを第一の目的とする起業形態を、多くの中高年者が、この形態を志向しているのが見えてきます。

また、会社勤務中に得たスキルを継続的に活用する場合や、新たなスキルを身に付けて起業するスタイルも一般的になってきているように思います。

これらの調査結果から見てみると、シニア世代の起業においては、自分の利益を目的とするような起業ではなく、何か社会的な貢献できるような起業スタイルをとることが成功へと至る道なのではないかと思われます。それが60歳以降のシニア起業の可能性を高めるポイントではないかと思うのです。

ちなみに、私が直接見たわけではないのですが、アメリカ社会では、60代どころか80代になっても、キラキラとした目でビジネスを語る人を多く見受けるそうです。そうしたシニア世代の多くは、過去の自分の実績ではなく、現在のアイディアや未来のビジョンについて熱く語るようです。日本においても、トラズナー氏のように60歳を過ぎてからでもシニア起業する人が多くなってくれば、医療問題や年金問題など数々の高齢化社会問題も解決していくことだろうと思います。

シニア世代の方は、定年後の人生を黄金期とするためにも、年金にだけに頼るのではなく、起業することや、社会的に役に立つことをして収入を得る道を探ってみてはいかがでしょうか。世界を見渡してみるなら、まだまだ日本のように社会的なインフラさえ十分に整っていない国も多いのです。このような国に支援の手を差し伸べるという道も考えられます。

シニア世代は、これまで社会から様々な恩恵を受けて生かされてきたという事実があります。その恩をこれからの人生でお返ししていくという道があるのではないかと、私は思っています。

それが、シニアにとって定年後の人生を黄金に輝かせる方法ではないでしょうか。



コメントは受け付けていません。